2014年7月10日木曜日

「最高です!スンシンちゃん」とIU



放送開始からどっぷりハマって毎回楽しみに見ていたWOWOWの韓流ファミリードラマ「最高です!スンシンちゃん」が終了しました。1回1時間5分で、全50回という日本では考えられな規模の、実に大変な大河ファミリードラマで、「ついに終わったか~」とちょっと放心状態です。


左から長女のヘシン、次女のユシン、そしてスンシン

三人姉妹の末娘、スンシンを主人公に、それぞれの人生を描くドラマ。ストーリー展開はためにためて、これでもか!というくらいにくどくて濃い。こういうのは苦手なのですが、妙にハマってしまった。韓国人の心の動きが理解しがたい場面もずいぶんあったが、楽しませてもらいました。

ドラマには、スンシンを女優として育てようとする芸能事務所のシン代表の動機、スンシンの出生の秘密、そしてスンシンの父親がひき逃げされた時の状況、と3つの大きな秘密があり、物語の進行につれてその秘密が明かされていく。そのたびに、主人公を初めとする登場人物は傷つき、大騒ぎになります。

秘密そのものはそれほど大したものではない。関係者たちが心を開いて誠実に対応すれば、深刻な愛憎劇にエスカレートする話じゃないんです。

でも登場人物たちは、とにかく大切なことをひとり心の中に溜め込んで、親しい人間にも、愛する人間にも話さない。結局、そのせいで、秘密は第三者から明らかにされることになり、大ごとになってしまう。

これはこの脚本家のクセなのか、韓国人の特異性なのか……

もう一つ、驚いたのは、登場人物の感情表現の激しさ。家族や友達同士の、とく女性同士の口げんかのすさまじいこと、すさまじいこと。少なくとも私なら「その人間と一生、関係を断つ」くらいの悲壮な決意をしなければ口にできないことをバンバン言い合う。そのくせ、短時間ですぐに仲直りしちゃんですよねw

でもこの感情表現のむき出しの激しさが、このドラマの、ひいては韓流ドラマの魅力になっているのは間違いありません。普段、表に出さないような、生な感情の発露に、心をわしづかみにされて、ゆすぶられる。……これが妙に快感なんですよね。私は毎回、冗談のように泣かされましたw



スンシンは歌手のIU(21)が演じています。ちょっと鼻ぺちゃのおたふく顔なのですが、実に健気でかわいい。スンシンと先に書いた彼女を女優として育てる芸能事務所社長、シン・ジュノの恋愛関係の進展がメインストーリーの1つ。私はジュノに感情移入して、スンシンとの恋愛を疑似体験したような感じでした。

現実では、誰かを好きになって胸が痛くなるような気持ちになったのは、いつだったかもう忘れてしまうくらい昔のことだけど、そんな気持ちが蘇りました。この2人に、もう会えないのか、と思うとなんだか寂しい……

ドラマの原題は「最高だ、イ・スンシン」。ひき逃げにあって亡くなった父親が死の前にスンシンに1日遅れのバースデーケーキを予約していたのですが、葬儀の後で姉が持ち帰ったケーキに書かれていたセリフがこれ。

ドラマの最初のほうでスンシンは、芸能事務所の社長を騙る男から詐欺に遭って、自己嫌悪で落ち込みます。父親はそんなスンシンに「才能なんて無くても私の娘は最高だ、最高だ、イ・スンシン」という励ましのメッセージを残していて、それがそのままドラマのテーマにもなっています。

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ドラマが面白かったのも確かですが、個人的には歌手としてのIUを知ったことが最大の収穫でした。一体どんな歌手なんだろう、と思ってYouTubeなどでパフォーマンスを見て仰天しました。

最初に見たのは「スンシンちゃん」の一場面。オーディションで、スンシンが80年代にヒットしたイ・ヨンの「忘れられた季節」を歌うクリップです。



歌唱力や表現力がずば抜けているのはもちろんですが、声そのものが圧倒的です。素晴らしく伸びのある高音、そしてちょっとハスキーな中音。聴いていて非常に心地よい声で、不思議なヒーリング・パワーがある。

IUは2年ほど前に、日本でもデビューしたのですが、タイミングが悪かったか、プロモーションが悪かったか、ブレイクせずに終わったのが残念。

でもロングスパンで考えれば、IUがいつか日本でも評価される日も来るような気がします。というか、このまま成長すれば、アジアを代表する歌姫になるのではないか、と期待しています。

このことを音楽を専門にしている友人に話したら、笑われてしまいましたが、彼女の声には何か特別な「x-factor」があると信じています。ひいきの引き倒しかもしれませんが、まぁ、ファンというものはそういうもんですw



ファンの方には周知の通り、IUは韓国では「国民の妹」と呼ばれています。おそらくそのイメージが決定的になったのは「Good Day」という10年12月にリリースされた大ヒット曲。親しい年上の男性に、泣きながら告白したのに、聞こえないふりをされてしまった……という歌です。

歌詞では「私はオッパが好きなの」というフレーズが繰り返されます。オッパというのは、これに相当する適当な日本語がないのですが、女性が親しい年上の男性に使う言葉で、「おにいちゃん」みたいな意味らしい。韓国人の男は年下の女性から「オッパ」と呼ばれるのが大好きだとか。で、この曲を聴くと、男たちはIUから秘めた想いを告白されたような気持ちになるwww

もう一つ、この曲にはIUのトレードマークとなったパートがあります。最後の10秒以上続く高音のロングシャウトで、途中で2回、音程を上げることから、「3段ブースター」と呼ばれています。

最近では、80年代、90年代のヒット曲をリメイクした「花しおり」というミニアルバムをリリース。21歳の歌手とは思えない、成熟した歌を聴かせてくれています。個人的にはこのアルバムが一番好きかもしれない。

これからどこまで成長するのか、楽しみで仕方ありません。

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脱線ついでにもう一つ。

ヒロインの名前「イ・スンシン」、漢字表記は李純信ですが、ハングルで表記すると「이순신」。秀吉の朝鮮出兵の際に、朝鮮水軍を指揮して日本軍と戦った朝鮮民族の英雄、李舜臣と全く同じです。ドラマではこの名前をネタにした場面が何回も出てきました。

私は李舜臣を主人公にした小説「孤将」をしばらく前に買って、積ん読状態だったのですが、ドラマでそのことを思い出し読んでみました。こちらも面白かった。

全て李舜臣の主観で描かれている作品で、秀吉の朝鮮出兵を朝鮮側から知るのは、興味深かかった。戦争小説としても非常に秀逸。500年前の無意味な、血生臭い殺し合いがリアルに再現されています。

韓国の作家金薫の作品で、翻訳は北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さんです。

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